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2005-09-30

松下が電力線モデム用モジュールとLSIを年内にも量産開始

またまた日経コミュニケーション,山根記者の記事です。9月26日の座長提案を,「我が社の製品ならクリアできる」としていますが,逆説的に読めば「他社の製品はクリアできない」ということか?つまりPLC-Jとしては座長提案を受け入れることはできないということか?FCCの規制値よりも緩い許容値を要求していたPLC-Jとしては,世界最悪のPLC製品を売らなくてもよくなっただけでも座長に感謝するべきなのに。

まだまだ一悶着もふた悶着もありそうなのに,年内には規制緩和の手続きにはいれる「はず」と言うのは,そうでもしないと評価ボードを購入しようと言う企業が現れないからであろう。

しかし,10万円もする評価ボードは高い。最初の製品は数万円?これが500円(ワンコイン)になる頃にはPLCのマーケットは存在しているのだろうか?今でもほとんど期待できないのに。マーケットは広がらなければモデムの価格も下落はしない。下落しなければマーケットは広がらない。そうこうしているうちに無線LANの高速版を使う人々が圧倒的に多くなり,PLCは完全な「隙間市場」で細々と生きていくしかない。つまり莫大な開発費は回収できないということだ。

ところで,この記事を詳細に読むといろいろなことが分かります。

「イーサネットと電力線通信のブリッジ機能」→結局インターネットと接続するためにはルータが必要。そうしないとISPが与えるWANアドレスを設定できないので通信できなくなる。当然だが,この点は無線LANでもc.LINKでも同じ。
「規制緩和の手続きに入れるはず」→期待を述べただけ。
「販売している状況にしたい」→同上。希望を述べただけであり,研究会でどういう結論になるかを注視しているのは明白。結論が出る前にゴーサインを出して膨大な在庫(しかも使用不可の製品)を抱える羽目には陥りたくないのが企業の本音である。
「当社の製品ならクリアできる」→まだクリアできていないのでさらなる研究開発が必要ということ。やはり研究会の結論が出る前には動けないということを意味している。
OFDMの松下がウンといっても,SSの住友電工はウンとは言えない。東京電力もウンとは言えない。PLC-Jとしてウンと言えば,漏洩電界をさらに大幅に低減しなければならないことを意味する。さらに経費をかけて研究開発をしないかぎり販売することはできないのだが,これ以上経費を捻出することはできないだろう。結局,PLC-Jは座長提案を受諾することはできないことになる。

前に進めば損失が増えるだけ。企業としてこれ以上損失を拡大する前にPLCから勇気ある撤退をし,資本と技術力を他方面に振り向けたほうが企業としてはメリットが大きい。

posted at 00:45:20 on 2005-09-30 by ohishi -

コメント

jr9mfk さんによるコメント

へぇ、「実際の電灯線を使って行う」展示用高周波利用設備の設置許可を関東総合通信局から取ったのか。それじゃ「実験用高速電力線搬送通信設備の設置許可に係る方針」が有名無実のような。
http://www.soumu.go.jp/s-ne...

ま、OFDM系の松下としては、環境雑音から10dBほど低い漏洩電界強度でも短波放送受信に影響を与えるとの報告があったその日、環境雑音を許容値とする大甘の座長提案があったのは大逆転で、研究会当夜は祝杯を挙げたに違いありません。

それはさておき、「我が社の製品ならクリアできる」という松下は次回研究会でもそう発言するでしょうか? いずれにせよクリアできないモデムを使っている社があるPLC-Jは当然反対し、研究会は物別れですね。

PLC-Jのような寡占団体は談合体質の護送船団になりやすく、求められている課題解決(漏洩電波の低減)のための競争機会が損なわれますから、本来なら研究会のような場で団体として発言させてはならないのです。一番悪いモデムに合わせた対応をするのなら、企業としても漏洩電波の低減に注力する必要はなく、技術開発は進みません。物別れのあと仕切り直す第3期研究会に向けては、そういうことにも気を配らないとね。
2005-09-30 01:39:08
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