HF-PLC Watching Site

2005-01-23

電気四学会関西支部専門講習会「高速電力線通信技術の最新動向」

1月21日に開催された表記講習会に出席してきました。プログラムや講師に関してはこちらをご覧下さい。

電波環境課長の話は,これまでの経緯や海外の動向も含め,研究会を立ち上げること,そこで専門家による「英知」を集結して議論してほしいこと,などが語られました。新しいサービスを導入する際の一般論として,国際電気通信連合におけるプロセスの説明に相当の時間を割いていました。CISPRについては数秒触れただけでした。企業から要望があるので検討はするが,どうすれば無線業務に影響が出ないようにするべきかを関係者で話して欲しいというスタンスが読めました。研究会を開催する期間については「分からない」とも。言い換えると,相当難しい案件であることを認識したコメントでした。

某半導体メーカの担当者が課長に「チップが売れないと困るから早く認めてくれ」とオフラインで迫る場面がありましたが,その場に居合わせた私は「世界中のどこでもPLC展開に苦労している。焦らずに良いものを作った方がいい。」とたしなめることに・・・

PLC-Jの講演で示された漏洩電界低減例は一昨年提示されたものと同じでした。「これは良い例であると思うが,最悪例はどういうものがあるのか?」と質問しましたら,「それは研究会で・・・」と逃げられました。PLCに興味がある人々の前では悪い例は見せたくないということでしょう。ただ,JARLとの合同実験のパネルやJARL関係者のコメント(思ったより漏洩が少ない)も示していたのですが,JARLの方は合同実験のことをPLC-Jが触れることを承諾しているのだろうかと思いました。

武蔵工業大学の徳田先生の講演で示された,ground waveの減衰特性(距離にどのように依存して減衰するか)は,国立天文台がかつて行った自由空間伝搬に基づく減衰特性を否定したいという思惑に基づくものでした。これに対し私は「PLCからの漏洩電波が全てground waveになるのであればいいが,sky waveもあるだろう。徳田さんはground waveはsky waveよりも早く減衰することを示したことになる。遠方への干渉評価ではsky waveを主として考えればいいということですね。」と言ったら,反論はありませんでした。

住友電工の方による海外動向の説明では,海外の商用サービス,試験サービスの利用者数が非常に少ない(最大は香港で1-2万人程度,他は1000-5000人程度)ことが提示されました。少ない理由を尋ねたら「PLCモデムが高価なので」ということ。ADSLなどとの競争によってどれがマーケットに残るかは不明だとの説明がありました。またスペインなどにおける商用サービスにおいては「干渉が生じた場合には訴訟に持ち込まれる」リスクがあることを承知でサービスを展開しているとのコメントもありました。

最後の講演であった松下電器の方のお話しはよくまとまっていました。漏洩電界測定ではおおむね30 dB(microV/m)以内に収まっていると話していました。また英国でBBC関係者の前で短波ラジオへのPLCによるノイズをソフトウエアノッチを有効にすることでだいぶ押さえたという例(録音例)も示していました。室内のネットに活用したい,IPを用いたネットを・・・という話ですが,一般の人が自分でLANを組めるかな?プライベートアドレスの設定,DHCPサーバの設定,等をきちんとやらないと接続できないんですがね。この方との立ち話では「電気機器をオンオフするたびにインピーダンスが変化するが,通信速度はどうなりますか?」という問いに対し「分からない。そういう環境は生き物なのでやってみないと」との素直な答え。

私のすぐ後ろに座っていた某社の方は「商売にするのは難しそうだな・・・」とつぶやいていました。

以上,簡単ですが報告致します。

posted at 14:59:06 on 2005-01-23 by ohishi -

コメント

石崎 亮史朗 さんによるコメント

参加及び報告お疲れ様です。参考になります。
2005-01-23 22:10:21

JE1CKA さんによるコメント

貴重な報告、特に質問に対する反応ありがとう御座いました。
2005-01-24 16:41:38
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